旅立ち

先日、悲しい報せが届いた。学生時代の後輩が闘病生活を続けていることは聞いていたが、彼女の早過ぎた旅立ちに驚き戸惑い悲しく、本当に残念に思う。また、何年も会っていない人に、突然メールや電話で訃報を伝えるのは思った以上に辛く、お互いにショックと動揺が隠せなかった。しかしながら、多くの人を通して、断片的に伝わってきた彼女の生き方に目頭が熱くなった。「私たちの知らないところで一生懸命生きていた」彼女は、社会的に意義のある活動を献身的にこなしていたのだ。よりよい社会を目指して。こんな時だからこそ、彼女のために気をしっかり持とうと思った。そんな気持ちが届いたのか、いや、その気持ちは共通だったようで、猛烈なスピードでML(メーリングリスト)やコミュニティが立ち上がった。彼女が再び結んでくれた絆を大切にしたい。皆で心を合わせ彼女を温かく送ろう。

…precious are all things that come from friends. ‐Theocritus

Thank you, my friends!

第64回写真展 幻のプルドゥン(韓国 伊作島)

国際会議に出席するため、韓国に出張してきました。今ホットな「持続可能な都市開発」というテーマで、海外からの代表団、そして、全国(韓国)から集まった人々と交流できて有意義な会だった。今回特に印象に残ったのは、視察で訪れた海に浮かぶ幻のプルドゥンだ。

プルドゥンは固有名詞ではなく一般名詞のようで、潮の干満によってできる砂州(砂丘)のことだそうだ。1日に2~3時間しか見ることができないそうで、仁川から特別にチャーター船を出していただき、約2時間で大伊作島の南に姿を現したプルドゥンに上陸。まさか海の底を歩くとは思わなかった。全長約4キロと韓国でも有数のものだそうだ。最近、韓国のTVで紹介されて、韓国内でも注目されているとのこと。

帰国後、プルドゥンのことを何人かの人に話したところ、このような現象は「全羅道にある珍島(チンド)の海割れが有名ですが、確か時期は2月か3月だったはず」と教えてもらった。実は、出張する前に、もしかして天童よしみの「珍島物語」の舞台ではないかと調べてみたが違っていた。それでも、全羅道(チョルラド)が全く無縁というわけではない。千の島があるという新安(シナン)から来た海洋学者たちと共にプルドゥンを見学することができたからだ。木浦とか地図の上だけでしか知らなかった全羅道の地名が身近なものとなった。その夜、同じく全羅道の光州から来ていた代表団の人々と大いに盛り上がった。

それから、「珍島物語」だけではなく、「ひょっとして『シルミド』(実尾島)と関連あるかも」と出張前に、こっそり映画をチェックしたが、伊作島の方はもっと沖合だった。出張の予習が映画鑑賞と笑えるが、「シルミド」を観ていたおかげで、「いい映画だったね」と、会話が弾んだ。仁川のあたりは干満の差が大きく、干潮の時は島が陸続きになったりすることもあるそうだ。仁川空港のあたりは干潟が続く。

プルドゥンが海に姿を消す前に、大伊作島へ移動して、村長さんの民泊(ペンション)の中庭で、昼食をいただいた。済州島から来ていた代表団の方が、地引網に引っかかった魚を刺身にしてくれて、コチュジャンで食べたが美味しかった。「ワサビと両方つけて食べなさい」と言われたが、まずはコチュジャンで賞味することにした。このことも、帰国後、何人かの人に話したのだが、韓国ではコチュジャンで食べるのがディフォルトだそうだ。また、コチュジャンをお酢でのばして使うと聞いたが、そう言われれば、ゆるい液体状で食べやすかった。釜山あたりでは白身魚にワサビの組み合わせもポピュラーだそうで、「両方つけなさい」が何となく理解できた。刺身は、韓国語で膾(フェ)と言うそうだ。(情報ありがとう!)

島でとれた野菜と海の幸を盛り込んだ味噌汁も大釜で作ってくれたのだが、今まで韓国で食べた味噌汁の中で一番美味しかったと思う。帰国後、この体験を「素朴だが上品な白味噌仕立て」と話すと、「あちらで『白味噌』は見たことがありません。大豆から作ったテンジャンという日本でいう田舎味噌ならとてもポピュラーですけど……」と、クレームが付いた。実は、自分でも不確かだったのだが、どう表現したらよいのか苦心したあげく思い付いた言葉だった。味噌の発酵がどんどん進んで味が濃くなる前の若い味噌のことを言いたかったのだ。

四国山脈で手作りしている田舎味噌を定期購買しているが、いつも「白味噌」と書いているのに、白味噌に見えたことはない。そして、熟成度によって色が濃くなるし、夏、冷蔵庫に入れていないと、あっという間に、テンジャンのように濃厚な味になる。しかしながら、今回、初めて韓国で若い味噌を口にして、四国山脈の田舎味噌と接点を見つけたのだ。「ああ、これだ!」と思った。四国山脈の味噌もテンジャンと同じく大豆ベースだ。また、貝のエキスと白味噌が絶妙にマッチしているので、勝手に書いてしまったが、そのおかげで、いろいろ教えてもらえたし発見があった。大釜の味噌汁は自家製の田舎味噌を使ったのに間違いないだろう。

そこで、白味噌とは何だろうかと考える。少し調べてみると、主な違いは熟成期間とあった。赤味噌は1年以上熟成させたものだそうだ。長期保存のため塩分の濃度が高く、コクが出て色が濃くなる。白味噌は熟成期間が数か月で麹の糖分の甘さが特徴だそうだ。さらに、JASによる日本のみその分類は、米みそ(大豆と米を発酵・熟成させたもの)、麦みそ(大豆と大麦又ははだか麦を発酵・熟成させたもの)、豆みそ(大豆を発酵・熟成させたもの)、調合みそ(各みそを混合したもの、もしくは、その他のみそ)だそうだ。本当にいい勉強になった。

それから、この大釜の味噌汁の中に、ズッキーニが入っていたが、意外とズッキーニが味噌に合うことも発見した。

昼食を終えた後、もう一度プルドゥンを見に行ったが、既に海に姿を消してしまっていた。まるで幻のようだった。

高度1万メートルのミニミニシアター

リクエストがあったので、今回は映画のトピックです。実は、映画を観る時間がない。かろうじて出張の際に、国際線で映画をサンプルできるので助かる。アカデミー賞受賞・ノミネート作品が充実しているので、映画ファンとして大いに満足だ。それでは、機中、映画のキャッチアップからスタート。

まずは、味わい深い秀作2本。スティーヴン・ダルドリー監督の第三作(「リトルダンサー」、「めぐりあう時間たち」に次ぐ)「愛を読むひと」の公開を、密かに楽しみにしていたが、本当に素晴らしい作品だった。それにしても、前作(二コール・キッドマン)に次ぎ、この映画でもアカデミー主演女優賞(ケイト・ウィンスレット)受賞と快挙だ。同じく演技の素晴らしさという点では、メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンのバトル「ダウト あるカトリック学校で」。ブランド物に身を固めたメリル様の(「プラダを着た悪魔」)であれ修道衣であれイジメが怖い。くわばら、くわばら。彼女は歌って踊ってハジケて「マンマ・ミーア!」と、改めて芸の幅に感服する。

もちろん「スラムドッグ$ミリオネア」もよかった。ダニー・ボイル監督ということで、どことなく「ミリオンズ」や「トレインスポッティング」的な不思議な世界観が展開する。みずみずしい感性と輝きのある作品だ。主人公の一途さに、思わず身を乗り出して応援していた。そして、日本到着までもう一本、「レスラー」も観ることにした。ダーレン・アロノフスキー監督の新作となれば見逃せない。機内アナウンスとともに高度が下がり始め、雲の下に日常が戻ってくるまで、手に汗を握り、ハラハラドキドキ、涙を流し、しんみりと感動しつつ、高度1万メートルのミニミニシアターを堪能した。

それでは、この1年位の間に観た映画の中で、特に印象に残ったものを振り返っておこう。個人的に、インパクトのあった作品2本。「アイム・ノット・ゼア」は、1人(ボブ・ディラン)の人生を6つの視点(全くタイプの違う6人の俳優が演じている)から描いており、コンセプトが非常に面白かった。そして、「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」。ベン・スティラーのバカバカしいジョークやゾッとするユーモアのセンスに、見る気が大いに失せるのだが、好みの問題は別として、こんな映画を作っちゃうスティラーって天才だと思った。噂どおりロバート・ダウニーJrの演技は天才的です。

今一番期待している映画は、コーマック・マッカーシー原作2本。まずは、「ザ・ロード」(原題 The Road)。トロント国際映画祭でどう評価されるか。そして、「ブラッド・メリディアン」(原題 Blood Meridian、2011年公開予定)。トッド・フィールドが監督とのことで、どのような映画になるのか楽しみだ。もちろん、見事に映画化されたコーエン兄弟の「ノーカントリー」が記憶に新しいが、どうやら、トミー・リー・ジョーンズで、「サンセット・リミテッド」(原題 The Sunset Limited)も製作が進んでいるようだ。I can’t wait!

友人から「お勧めは?」と聞かれると、これも最大公約数(万人向け)というわけではないが、ミュージカル2本をおススメしている。まずは、ビートルズをちりばめた、ジュリー・テイモア監督独自の世界が広がる「アクロス・ザ・ユニバース」。ファンタスティック!!!そして、ジョナサン・ラーソンのロック・オペラ「レント ライヴ・オン・ブロードウェイ」(2008年)。先に公開された映画「RENT/レント」(2005年)は、ほぼオリジナルキャストがウリだったが、ライヴの方は「あの感動をもう一度」とばかりの臨場感が素晴らしい。DVDに収録されたメイキングとかボーナス映像もマジ感動したよ。1年、525,600分、レントヘッド万歳!

それから、「幸せになるための27のドレス」。実は、公開当時、口コミもイマイチだったし、『「プラダを着た悪魔」のスタッフが贈る』というキャッチ(二番せ~~~んじ)に、大いに観る気が失せた。しかしながら、映画の中、主人公(キャサリン・ハイグル)と、ジェームズ・マーズデンのデュエット『ベニーとジェッツ やつらの演奏は最高』(邦題)は必見。大いに盛り上がった。

オリジナルは1974年にリリースされたエルトン・ジョンのBennie and the Jetsだが、「あれっ、こんなリリックだったっけ?」と首を傾げつつ、もともと訳のわからないブッ飛んだ歌詞だから、「自己流でも何でもアリよ」と、深く追求しない。心を開くことができない主人公(ハイグル)が、電気のオッパイ(electric boobs、実はelectric boots)とかモヘアの靴(mohair shoes、本当は靴じゃなくてスーツ)とかセイウチ(walrus sounds、本当はwalls of sound)だとか、思いっきり勘違いしていて笑える。マーズデンの方は、ナンセンスな歌詞なんてことを忘れるほど熱唱。それぞれ自分が正しいと主張しながら、出まかせの詞で大いに盛り上がって、見ているだけでも楽しく、一緒に踊りたくなった。文字どおり、「やつらの演奏は最高!」

第63回写真展 我が心のジョージア

大学時代のセクション(クラス)メートから、「最近はまったく更新されていませんね」と、メールが届いた。卒業以来会っていないのに、ブログを見てくれていたなんて、ちょっと感激。ありがとう!!!ブログのおかげだ。
 
この機会に、近況報告を兼ねてupdateしよう。父が寝たきりになってほぼ1年。何度か危機を迎えたが、何とかhanging in there。そして、仕事の方は、ますます海外との往来が増え、海外からの来客も夏は多いのだが、今年は新型インフルエンザに振り回されて大忙しだった。
 
まずは、アメリカに出張した時の写真をアップしておこう。メインの出張先で用務を終え、アトランタ(ジョージア州)から車で約2~3時間の田舎町を訪れた。アトランタの郊外を過ぎると、高層ビル群が雑木林にかわり、日本から持参した携帯が使えなくなる。ディープサウスに来たのだと実感する。
 
温かい日差しを浴びながらカントリーロードをドライブすると、ヒューストンから北へ緩やかな丘陵森林地帯を走っているような錯覚を覚える。まるで我が家に帰ったようだ。木漏れ日が注ぐ木立に緑の濃淡が風に舞いながら、車窓をかすめる。よく見てみると、時折、アメリカ楓が混じり、樹木の種類が少し違う。緯度的にヒューストンより北だ。アトランタから北東約100マイル(160キロ)。後で地図を確かめてみると、紅葉の美しい南北のカロライナ州に近かった。キラキラ輝く紅葉の頃を想うだけで、胸が熱くなる。できれば紅葉の時期に、この田舎道をドライブしてみたいものだ。牛や家畜を放牧したのどかな風景は、テキサスのヒルカントリーにも似ていて何だか懐かしい。
 
サマータイムを使っていることもあってか日が長い。夕暮れの余韻がいつまでも尾を引き、ふと時間が止まったかのようだ。ふと、どこからか「我が心のジョージア」(Georgia on My Mind)が聞こえてくるような気がした。アメリカ南部の温かさが郷愁を誘う。茜色に染まったタウンスクエアの写真を何枚かアップしておきますね。