国際会議に出席するため、韓国に出張してきました。今ホットな「持続可能な都市開発」というテーマで、海外からの代表団、そして、全国(韓国)から集まった人々と交流できて有意義な会だった。今回特に印象に残ったのは、視察で訪れた海に浮かぶ幻のプルドゥンだ。
プルドゥンは固有名詞ではなく一般名詞のようで、潮の干満によってできる砂州(砂丘)のことだそうだ。1日に2~3時間しか見ることができないそうで、仁川から特別にチャーター船を出していただき、約2時間で大伊作島の南に姿を現したプルドゥンに上陸。まさか海の底を歩くとは思わなかった。全長約4キロと韓国でも有数のものだそうだ。最近、韓国のTVで紹介されて、韓国内でも注目されているとのこと。
帰国後、プルドゥンのことを何人かの人に話したところ、このような現象は「全羅道にある珍島(チンド)の海割れが有名ですが、確か時期は2月か3月だったはず」と教えてもらった。実は、出張する前に、もしかして天童よしみの「珍島物語」の舞台ではないかと調べてみたが違っていた。それでも、全羅道(チョルラド)が全く無縁というわけではない。千の島があるという新安(シナン)から来た海洋学者たちと共にプルドゥンを見学することができたからだ。木浦とか地図の上だけでしか知らなかった全羅道の地名が身近なものとなった。その夜、同じく全羅道の光州から来ていた代表団の人々と大いに盛り上がった。
それから、「珍島物語」だけではなく、「ひょっとして『シルミド』(実尾島)と関連あるかも」と出張前に、こっそり映画をチェックしたが、伊作島の方はもっと沖合だった。出張の予習が映画鑑賞と笑えるが、「シルミド」を観ていたおかげで、「いい映画だったね」と、会話が弾んだ。仁川のあたりは干満の差が大きく、干潮の時は島が陸続きになったりすることもあるそうだ。仁川空港のあたりは干潟が続く。
プルドゥンが海に姿を消す前に、大伊作島へ移動して、村長さんの民泊(ペンション)の中庭で、昼食をいただいた。済州島から来ていた代表団の方が、地引網に引っかかった魚を刺身にしてくれて、コチュジャンで食べたが美味しかった。「ワサビと両方つけて食べなさい」と言われたが、まずはコチュジャンで賞味することにした。このことも、帰国後、何人かの人に話したのだが、韓国ではコチュジャンで食べるのがディフォルトだそうだ。また、コチュジャンをお酢でのばして使うと聞いたが、そう言われれば、ゆるい液体状で食べやすかった。釜山あたりでは白身魚にワサビの組み合わせもポピュラーだそうで、「両方つけなさい」が何となく理解できた。刺身は、韓国語で膾(フェ)と言うそうだ。(情報ありがとう!)
島でとれた野菜と海の幸を盛り込んだ味噌汁も大釜で作ってくれたのだが、今まで韓国で食べた味噌汁の中で一番美味しかったと思う。帰国後、この体験を「素朴だが上品な白味噌仕立て」と話すと、「あちらで『白味噌』は見たことがありません。大豆から作ったテンジャンという日本でいう田舎味噌ならとてもポピュラーですけど……」と、クレームが付いた。実は、自分でも不確かだったのだが、どう表現したらよいのか苦心したあげく思い付いた言葉だった。味噌の発酵がどんどん進んで味が濃くなる前の若い味噌のことを言いたかったのだ。
四国山脈で手作りしている田舎味噌を定期購買しているが、いつも「白味噌」と書いているのに、白味噌に見えたことはない。そして、熟成度によって色が濃くなるし、夏、冷蔵庫に入れていないと、あっという間に、テンジャンのように濃厚な味になる。しかしながら、今回、初めて韓国で若い味噌を口にして、四国山脈の田舎味噌と接点を見つけたのだ。「ああ、これだ!」と思った。四国山脈の味噌もテンジャンと同じく大豆ベースだ。また、貝のエキスと白味噌が絶妙にマッチしているので、勝手に書いてしまったが、そのおかげで、いろいろ教えてもらえたし発見があった。大釜の味噌汁は自家製の田舎味噌を使ったのに間違いないだろう。
そこで、白味噌とは何だろうかと考える。少し調べてみると、主な違いは熟成期間とあった。赤味噌は1年以上熟成させたものだそうだ。長期保存のため塩分の濃度が高く、コクが出て色が濃くなる。白味噌は熟成期間が数か月で麹の糖分の甘さが特徴だそうだ。さらに、JASによる日本のみその分類は、米みそ(大豆と米を発酵・熟成させたもの)、麦みそ(大豆と大麦又ははだか麦を発酵・熟成させたもの)、豆みそ(大豆を発酵・熟成させたもの)、調合みそ(各みそを混合したもの、もしくは、その他のみそ)だそうだ。本当にいい勉強になった。
それから、この大釜の味噌汁の中に、ズッキーニが入っていたが、意外とズッキーニが味噌に合うことも発見した。
昼食を終えた後、もう一度プルドゥンを見に行ったが、既に海に姿を消してしまっていた。まるで幻のようだった。