私の映画100選プラス(2007年版)

以前,好きな映画100本を,約1か月半かけて選んでみた。期限付き(平成18年1月15日まで)にして,納得がいこうがいきまいが,とりあえず選ぶことにした。もちろん,納得のいくリストが理想であったが,そうは簡単にいかなかった。

それまでの自分の映画鑑賞史でもあるわけだし,まだ観ていない映画の中に評判の高いものもある。どれだけ1か月半の間に確かめることができるのか? 無謀かつ楽しく苦しい自分探しの旅になった。しかも,一番の問題は私の記憶だ。結構いい加減なものだと気付く。

長い間観ていない映画を,もう一度観て確かめるのか? それとも記憶の記憶(どれ位インパクトがあったか)に頼るのか? 再度観てみると,印象が変わった作品も多い。もう卒業したものもあった。以前気付かなかったのに,味わいや深みが増した作品もある。私が変わったからに違いない。

この体験を通して,自分の観た映画でさえ,全て同じラインに並べて比べることは,ほとんど不可能であるということがわかった。記憶力の限界だ。面白そうな新しい映画がどんどん公開されるのも気になる。限られた時間に一体何ができる?

とりあえず,時空の1点で選ぶしかない。過去全般を網羅できなければ,未来でもない。ただ,現在進行形ということなら,選べるだろう。

以前も書いたが,このチャレンジは,お勧め映画でなければ,コンセンサス(誰からも認められる映画)のリスト作りでもない。自分にとって意味のあった映画を洗い出す作業だ。つまり,自己探求的な試みであり,個人的な区切りでもある。

もちろん,私の好きな映画を好きな人と出会えるのは嬉しいし,私の知らない世界(映画)を教えてくれるのは,本当にありがたい。つまり,ここから生まれる新たなる会話や発見が,一番の収穫といえる。

そこで,もう一度無謀なことをすることにした。以前,もし好きな映画100本を,再び選ぶことがあれば,好きな監督(もしくは脚本家)という括りで選んでみてはどうか考えた。つまり,私にとって,映画で最も注目する切り口だ。無謀かもしれんが,実行あるのみ。やってみることにした。

まずは,今,最も好きな監督さん6人。

1 クシシュトフ・キエシロフスキー監督
(1) 「デカローグ」(1988年)
(2) 「偶然」(1982年)
(3) 「アマチュア」(1979年)

2 クリストファー・ノーラン監督
(4) 「メメント」(2000年)

3 デレク・ジャーマン監督
(5) 「カラヴァッジオ」(1986年)

4 アン・リー監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(6) 「グリーン・デスティニー」(2000年)

5 テレンス・マリック監督
(7) 「天国の日々」(1978年)

6 アンソニー・ミンゲラ監督
(8) 「イングリッシュ・ペイシェント」(1996年)

そして,頭の中を覗いてみたい監督さんと脚本家7人。

7 スティーヴン・ソダーバーグ監督・脚本
(9) 「セックスと嘘とビデオテープ」(1989年)

8 コーエン兄弟
 (10) 「バーバー」(2001年)

9 チャーリー・カウフマン(脚本)
(11) 「アダプテーション」(2002年)

10 ブライアン・シンガー監督
(12) 「ユージュアル・サスペクツ 」(1995年)

11 アレハンドロ・アメナーバル監督
(13) 「オープン・ユア・アイズ」(1997年)

12 ダーレン・アロノフスキー監督
(14) 「π」(1997年)

ここ数年注目している監督さんと脚本家で6人。

13 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督&ギジェルモ・アリアガ脚本
(15) 「バベル」(2006年)

14 スティーヴン・ダルドリー監督
(16) 「めぐりあう時間たち」(2002年)
(17) 「リトル・ダンサー」(2000年)

15 スティーヴン・ギャガン
(18) 「シリアナ」(2006年)監督・脚本
(19) 「トラフィック」(2000年)脚本

16 ウェス・アンダーソン監督・脚本
(20) 「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001年)

17 リチャード・ケリー監督・脚本
(21) 「ドニー・ダーコ」(2002年)

次に,現役の監督さんで,私の中で既に不動のクラシック(古典)となりつつある作品群と,敬愛する監督さん15人。(もちろん,この他にも沢山いるのですが,とりあえず。)

18 スティーヴン・スピルバーグ監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(22)  「JAWS ジョーズ」(1975年)
(23)  「レイダース 失われた聖櫃(アーク)」(1981年) 
(24)  「カラーパープル」(1985年)

19 フランシス・フォード・コッポラ監督
(25) 「ゴッドファーザー」(1972年,PART II 1974年)

20 ロン・ハワード監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(26) 「ビューティフル・マインド」(2001年)

21 ロバート・ゼメキス監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(27) 「フォレスト・ガンプ/一期一会」

22 リドリー・スコット監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(28) 「グラディエーター」(2000年)

23 フィリップ・カウフマン監督
(29) 「存在の耐えられない軽さ」(1988年)

24 ラッセ・ハルストレム監督
(30) 「ショコラ」(2000年)

25 クリント・イーストウッド
(31) 「許されざる者」(1992年)
(32) 「ミスティック・リバー」(2003年)
(33) 「ミリオン・ダラー・ベイビー」(2004年)

26 マーティン・スコセッシ監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(34) 「タクシードライバー」(1976年)
(35) 「レイジング・ブル」(1980年)

27 ピーター・ウィアー監督
(36) 「いまを生きる」(1989年)

28 ガス・ヴァン・サント監督
(37) 「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年,脚本ベン・アフレック&マット・デイモン)

29 ペドロ・アルモドバル監督・脚本
(38) 「オール・アバウト・マイ・マザー」(1998年)

30 ジェームズ・キャメロン監督・脚本(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
 (39) 「タイタニック」(1997年)

31 サム・ライミ監督
(40) 「スパイダーマン」(2002年,2004年)

32 ジョナサン・デミ監督
(41) 「羊たちの沈黙」(1991年)

ロード・ムービー7本。

33 アルフォンソ・キュアロン監督
(42) 「天国の口,終わりの楽園」(2001年)

34 ヴァルテル・サレス監督
(43) 「セントラル・ステーション」(1998年)

35 キャメロン・クロウ監督・脚本
(44) 「あの頃ペニー・レインと」(2000年) 

36 マーティン・スコセッシ監督(※前出)
(45) 「アリスの恋」(1974年)

37 バリー・レヴィンソン監督
(46) 「レインマン」(1988年)

38 ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督
(47) 「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年)

独自の世界を持つユニークな監督6人。

39 クエンティン・タランティーノ監督・脚本
(48) 「キル・ビル」(2003年,2004年)

40 リュック・ベッソン監督・脚本
(49) 「ニキータ」(1990年)

41 ロバート・ロドリゲス監督・脚本
(50) 「シン・シティ」(2005年)

42 ティム・バートン監督
(51) 「シザーハンズ」(1990年)

43 トム・ティクヴァ監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(52) 「ラン・ローラ・ラン」(1998年)

44 ジム・ジャームッシュ監督・脚本
(53) 「コーヒー&シガレッツ」(2003年)

ミュージカル9本!

45 ロブ・マーシャル監督
(54) 「シカゴ」(2002年)

46 バズ・ラーマン監督・脚本
(55)「ムーラン・ルージュ」(2001年)

47 カルロス・サウラ監督・脚本
(56) 「カルメン」(1983年)

48 ジム・シャーマン監督・リチャード・オブライエン原作
(57) 「ロッキー・ホラー・ショー」(1975年)

49 キャロル・リード監督 
(58) 「オリバー!」(1968年)

50 ジョージ・キューカー監督
(59) 「マイ・フェア・レディ」(1964年)

51 ロバート・ワイズ監督
(60) 「サウンド・オブ・ミュージック」(1964年)
(61) 「ウエスト・サイド物語」(1961年)

52 ジーン・ケリー監督・主演
(62) 「雨に唄えば」(1952年)

映画化された舞台作品から2本。

53 ハワード・デイヴィース監督・脚本
(63) 「コペンハーゲン」(2002年)

54 ヘクトール・バベンコ監督
(64) 「蜘蛛女のキス」(1985年)

原作も映画もよかった7本!

55 ピーター・ジャクソン監督,J.R.R. トールキン原作
(65) 「ロード・オブ・ザ・リング」三部作(2001年,2002年,2003年)

56 スティーヴン・キング原作,フランク・ダラボン監督
(66) 「ショーシャンクの空に」(1994年)

4 アン・リー監督(※前出),アニー・プルー原作,ラリー・マクマートリー脚本
(67) 「ブロークバック・マウンテン」(2005年)

57 デヴィッド・グターソン原作,スコット・ヒックス監督
(68) 「ヒマラヤ杉に降る雪」(1999年)

58 ジェームズ・アイヴォリー監督,カズオ・イシグロ原作
(69) 「日の名残り」(1993年)

59 ガブリエル・アクセル監督,アイザック・ディネーセン(カレン・ブリクセン)原作
(70) 「バベットの晩餐会」(1987年)

43 トム・ティクヴァ監督(※前出)
(71) 「パフューム ある人殺しの物語」(2006年)

60 エイミ・タン原作,ウェイン・ワン監督
(72) 「ジョイ・ラック・クラブ」(1993年)

61 ハーパー・リー原作,ロバート・マリガン監督
(73) 「アラバマ物語」(1962年)

宇宙・(近)未来・パラレルワールド・SF系から12本。

20 ロン・ハワード監督(※前出)
(74) 「アポロ13」(1995年)

21 ロバート・ゼメキス監督(※前出)
(75) 「コンタクト」(1997年)

22 リドリー・スコット監督(※前出)
(76) 「ブレードランナー」(1982年,フィリップ K. ディック原作)

62 アンドリュー・ニコル監督・脚本
(77) 「ガタカ」(1997年)

63 フランクリン J. シャフナー監督
(78) 「猿の惑星」(1968年)

64 ポール・ヴァーホーヴェン監督
(79) 「トータル・リコール」(1990年,フィリップ K. ディック原作)

30 ジェームズ・キャメロン監督・脚本(※前出)
(80) 「ターミネーター2」(1991年)

65 ウォシャウスキー兄弟
(81) 「マトリックス」(1999年)

66 アレックス・プロヤス監督・脚本
(82) 「ダークシティ」(1998年)

67 スタンリー・キューブリック監督
(83) 「2001年宇宙の旅」(1968年)

68 アンドレイ・タルコフスキー監督
(84) 「惑星ソラリス」(1972年)

69 ダニー・ボイル監督
(85) 「サンシャイン2057」(2007年)

戦争・コンフリクト・社会の不条理10本。

70 ロベルト・ベニーニ監督・脚本・主演
(86) 「ライフ・イズ・ビューティフル」(1998年)

18 スティーヴン・スピルバーグ監督(※前出)
(87) 「シンドラーのリスト」(1993年)
(88) 「プライベート・ライアン」(1998年)
(89) 「太陽の帝国」 (1987,J.G. バラード原作)

71 ダニス・タノヴィッチ監督
(90) 「ノー・マンズ・ランド」(2001年)

72 テリー・ジョージ監督・脚本
(91) 「ホテル・ルワンダ」(2004年)

22 リドリー・スコット監督(※前出)
(92) 「ブラックホーク・ダウン」(2001年)

73 フェルナンド・メイレレス監督
(93) 「シティ・オブ・ゴッド」(2002年)

74 トニー・ケイ監督・撮影
(94) 「アメリカン・ヒストリーX」(1998年) 

75 ジョン・シングルトン監督・脚本
(95) 「ボーイズ‘ン・ザ・フッド」(1991年)

コメディ4本。

76 ジョン・パトリック・シャンレー監督
(96) 「ジョー,満月の島へ行く」(1990年)

77 ハル・アシュビー監督
(97) 「チャンス」(1979年)

78 メル・ブルックス監督・脚本
(98) 「ヤング・フランケンシュタイン」(1974年)

79 ビリー・ワイルダー監督・脚本
(99) 「お熱いのがお好き」(1959年)

ケヴィン・コスナー主演作品から3本。

80 ケヴィン・コスナー監督
(100) 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」(1990年)

81 ロン・シェルトン監督・脚本
(101) 「さよならゲーム」(1988年)

82 ケヴィン・レイノルズ監督・脚本
 (102) 「ファンダンゴ」(1985年)

不思議な男女の縁10本。

83 チェン・カイコー監督
(103) 「さらば,わが愛 覇王別姫」(1993年)

84 ウォン・カーウァイ監督
(104) 「花様年華」(2000年)

85 ウォーレン・ベイティ監督・脚本・主演
(105) 「天国から来たチャンピオン」(1978年)

86 ジョン・マッデン監督
(106) 「恋におちたシェイクスピア」(1998年)

87 デヴィッド・クローネンバーグ監督
 (107) 「デッドゾーン」(1983年,スティーヴン・キング原作)

88 ブルーノ・ニュイッテン監督・脚本
 (108) 「カミーユ・クローデル」(1988年)

89 ケヴィン・スミス監督・脚本
(109) 「チェイシング・エイミー」(1997年)

90 ローレンス・カスダン監督・脚本
(110) 「偶然の旅行者」(1988年)

91 ロブ・ライナー監督
(111) 「プリンセス・ブライド・ストーリー」(1987年)

92 マイク・ニコルズ監督(※後ほど,他のカテゴリにも登場)
(112) 「クローサー」(2004年)

アニメから3本。

93 ディズニー
(113) 「ダンボ」(1941年)

94 宮崎駿監督・原作
(114) 「もののけ姫」(1997年)

95 レイモンド・ブリッグス原作・ハワード・ブレイク音楽
(115) 「スノーマン」(1982年)

今,最も注目している新進気鋭の監督さん3人。

96 ベネット・ミラー監督
(116) 「カポーティ」(2005年)

97 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督
(117) 「善き人のためのソナタ」(2006年)

98 ダンカン・タッカー監督・脚本
(118) 「トランスアメリカ」(2005年)

そろそろ100人を超えるが,クラシック名作が,かなり抜けている。最近,観ていないため忘れたか,記憶が定かでないか,まだ観ていないか。悪しからず。

99 アルフレッド・ヒッチコック監督
(119) 「裏窓」(1954年)

100 デヴィッド・リーン監督
(120) 「アラビアのロレンス」(1962年)
(121) 「ドクトル・ジバゴ」(1965年)

101 黒澤明監督
(122) 「羅生門」(1950年)
(123) 「デルス・ウザーラ」(1975年)

102 ウィリアム・ワイラー監督
(124) 「ベン・ハー」(1959年)

103 ジョン・フォード監督
(125) 「怒りの葡萄」(1939年)

104 ヴィットリオ・デ・シーカ監督
(126) 「自転車泥棒」(1949年)

105 フランク・キャプラ監督
(127) 「素晴らしき哉,人生!」(1946年)

106 ルネ・クレマン監督
(128) 「太陽がいっぱい」(1960年)
(129) 「禁じられた遊び」(1952年)

107 ジャン=リュック・ゴダール監督
(130) 「気狂いピエロ」(1965年)

93 マイク・ニコルズ監督(※前出)
(131) 「卒業」(1967年)

108 ジョン・シュレシンジャー監督
(132) 「真夜中のカーボーイ」(1969年)

109 デニス・ホッパー監督・脚本・主演
(133) 「イージー・ライダー」(1969年)

110 ミロス・フォアマン監督
(134) 「カッコーの巣の上で」(1975年)

以上,平成19年9月29日現在。110人(プラス),134本分の映画です!!!

パフューム ある人殺しの物語

ベストセラー「香水 ある人殺しの物語」(パトリック・ジュースキント)が原作で,トム・ティクヴァが監督,演奏はサイモン・ラトルの率いるベルリン・フィル,大型予算となると,話題になって当然。もちろん,大型予算やベストセラーの映画化ということは,失敗の(もしくは批判の対象になる)落とし穴でもあるのですが。この映画も,前評判が高かった割には,公開後そそくさと消え入った感じでした。(あまり期待して映画を観るなというヒント1)

それでもジュースキントだ,ティクヴァだ,ベルリン・フィルだ! 怖いもの見たさ? ストーリーの内容の怖さというよりは,どのように映画として失敗したのでしょうか? まぁ,とりあえず観てみることにしましょう。以下,ざっと原作と映画化の比較です。

天才的な鼻(嗅覚)を持つ不遇な殺人者の数奇な異聞奇譚。原作Das Parfumの少なくとも2/3は,主人公グルヌイユの周りの人物描写で,滑稽かつユーモアに溢れていて,ダーク・コメディのようで,殺人ミステリーであることを忘れてしまうほどでした。

映画は時間制限があるので,乳母や神父やエスピナス公爵の逸話等,面白いけれど話の核から外れ,ストーリーが脱線するエピソードの数を削り,視覚的にテンポよく展開し,起伏のあるストーリーテリングは,さすがは,「ラン・ローラ・ラン」のティクヴァ監督。お見事です! そして,ダスティン・ホフマンの調香師バルディーニは,原作に負けず笑えました。鼻と言えば彼ですね。

18世紀,パリの掃き溜めの異臭から生まれたグルヌイユが,稀有な匂いに取り憑かれ,手に入れるためには,いかなる犠牲も厭わず,計画的に目的を達成します。しかしながら,欲しいものを手に入れた途端に味わう空しさは,匂いのはかなさに似ています。欲する・創造するというプロセスにこそ悦びがあるという逆説は,小説の方がわかりやすく,アーティストがいかに創造し続けることができるのかという命題でもあります。

群衆の中の陶酔と孤独は,小説の方はグルヌイユに対して冷酷な描写で,映画の方は,マレー区の少女(赤毛のスモモ売り)の思い出を甘く重ねたり,賛否は抜きにしても,グルヌイユに人間味を加えていました。マレー区の少女は海の匂いとスイレンとスモモの薫りの完璧な調和と小説にありましたが,映画では,言葉で表現せず,金色のスモモの果肉と果汁のイメージに専念しています。

また,映画では,グルヌイユを演じたベン・ウィショーの不思議なカリスマ性を生かして,匂いのクライマックスを,ロック・スターのごとく輝かせていました。赤毛のローラと父親の逃亡と追跡の映像化も素晴らしく,全体的に効率よく視覚的に語られていたと思います。ただ,ガラス管の中の少女とか手塚治漫画でおなじみのはずなんですが,小説ではほのめかされていた程度の描写が鼻についたような気がします。

小説になかった,匂い(香水)のブレンドを作る際のhead(頭,第一印象)・heart(心,本性)・ body(土台,残り香)の説明と視覚化は簡潔かつ効果的,そして,グルヌイユの動機としても,わかりやすかったと思います。その他にも,言葉を視覚化するという点で,この映画は素晴らしいところが沢山ありました。

ある人殺しの物語は,嗅覚の物語です。本も映画も,直接匂いを伝えることができません。どちらも二次的(間接的)な匂いの体験なのです。

読者の想像力を刺激する文章は,実際の匂いよりパワフルでありうるのかもしれません。しかしながら,読者の想像力を刺激する映像は可能でしょうか。(あまり期待して映画を観るなというヒント2) 視覚というものは,見てのとおり。読み手の想像力を越えるのは,なかなか難しく,そのあたりが,想像力豊かな小説を映画化する際の大きな課題だと感じました。

「パフューム ある人殺しの物語」 ★★★☆☆

原っぱと遊園地を映画に流用したら……

美術館の学芸員Mr. & Mrs. Mと久しぶりに会い,美術談義で盛り上がりました。面白い話題が四方八方から飛び出しましたが,とりわけ印象に残った概念(原っぱと遊園地)を映画に応用してみようと思います。

まずは,青木淳氏(建築家)の『原っぱ(フィールド)と遊園地』という講演を聞いたMさんからの説明。大雑把に言うと,遊び方(遊ぶもの)が決まっている遊園地と,遊びの選択によって創られていくフィールド。そして,一緒に観賞したアートについて,3人で話し合いました。

クリエイティビティ(創造性)の余地があり,実験的かつ何か新しいものを生み出す可能性があるといった点で,原っぱは私の思う芸術に近く,ビジネスとして成り立つことが前提(かつ最優先)であり,一貫性を提供する点で,遊園地は商業アートに近いと感じます。もちろん例外もありますし,境界が曖昧なものもあります。

原っぱの面白いところの一つは,参加者に考えを促すところです。遊園地の短所であり,同時に長所なのは,考えなくていいところです。

遊園地はレストランのような感じで,料理してくれたものを食べます。レストランといってもピンからキリまであるように,例えば,一貫性といった点で,世界中どこでも同じハンバーガーを提供するマクドナルド,そして,その対極にあるのは,その日の仕入れ(材料)次第で創作レシピを提供するレストランChez Panisse(バークレーのシェ・パニーズ)。といった感じで,どれほど機能を分解して規格化(画一化)しても,何らか創意工夫する余地が残るわけです。

原っぱは,体験学習ないし料理教室。参加型です。場合によっては,釣りに行って,浜辺で釣った魚をさばいて食べるような感じです。魚が釣れない日もあれば,釣りのノウハウがない私など,指導してくれる人がいなければ,食いっぱぐれてしまうでしょうね。釣りはまだしも,「狩り行って食料確保せよ」等と言われたら,どうしましょう!スーパーで買っちゃだめ?

また,原っぱといえども,野放し状態がよいとは限らず,子どもの遊びと同じで,(レベルに合った)ルールや遊びのキッカケがなくては,何をしていいのかわからず,つまらないもので終わる(ネガティブ体験になる)かもしれません。自主性や自分で考えることを促す,つまり,創造性やアイデアを刺激する環境や触媒が大切になります。

よくできた遊園地もあれば,しょーもない遊園地もある。原っぱで大いに遊べることもあれば,結局何もせず終わることもある。どちらつかずの中途半端なものもあれば,原っぱとしても遊園地としても成功することもあるかもしれませんし,どちらもでもない新しいタイプのものもあるかもしれません。

もちろん,ここでは,原っぱと遊園地を比較して,どちらがいいか決めるものではありません。どちらも存在理由があるからです。面白いコンセプトなので,映画に流用してみることにしましょう。ビジネスとして成り立たなくてはならない映画は,基本的に遊園地なのですが,あえて遊園地型と原っぱ型に分けて考えてみようと思います。

まずは,先行ロードショーで観た「300」(スリーハンドレッド)。フランク・ミラーのグラフィック・ノベル(劇画)の映画化。先にロバート・ロドリゲス監督と組んだ「シン・シティ」がグロテスクなものの大変新鮮だったので,大いに期待していました。よかったのですが,あまり書くことがないというか,6月上旬に観て以来,そのままになっていました。

「グラディエーター」(2000年)風の麦畑やスモーキーな色調に,赤いマント(もちろん血のイメージでもあります)のアクセントが映えます。ヴィジュアルな面は噂どおり素晴らしく,何と言っても,神話から飛び出したようなお兄様たち。パンツいっちょで大奮闘する鍛え抜かれた体!

選り抜きとは言えスパルタ軍の300人 vs.  ペルシア大軍100万人。テルモピュライの戦いは,まさに四面楚歌。窮地に追い込まれたという点では,グラディエーターと重なる部分がありますが,「300」は,あまりにも強過ぎて,なんだか印象に残りませんでした。グラディエーターことマキシマスにアドバイスしたプロキシモの言葉を忘れたか!(簡単に勝ち過ぎるな。観衆の心を捕らえよ。)

あまり深く考えずに,楽しむことができるといった点で,「300」は,典型的な遊園地型の映画だと思います。

よくブログを書いていて思うのですが,わからないから少しでも理解したいと沢山書いてしまうことがあります。よっぽど好きな映画なんだろうなと,誤解されるかもしれないと思いつつ,文章の量と好きであること,特におすすめ度とは比例しません。念のため。

もう1本は,「スキャナー・ダークリー」。正直なところ,もし「300」と「スキャナー・ダークリー」のどちらか1本を推薦するとしたら,「300」だと思います。でも,「スキャナー・ダークリー」は,長々とブログを書いてしまうタイプです。 どちらかといいますと,もう一息の映画だと思うのですが,なかなか面白い試みだと思います。実写とアニメの融合は今までもありましたが,実写をトレース,しかも手書きと,大いに手間暇かけて作った映画です。P.K.ディック原作というだけで注目!

手書きのスタイルが,原作が執筆された頃のイラスト風(当時のアメリカの広告に出てくる感じ)で,ちょっと古いかなとも思ったのですが,髪がまるで独自の意思があるかのように揺れる様子だとか,新しい感覚の部分もあり,特に,ロバート・ダウニーJr.とキアヌ・リーヴスのスケッチは素晴らしい!

実験的といった意味で,「スキャナー・ダークリー」はフィールド(原っぱ)型だと思います。そうそう,フィールドのもう一つの特徴は,未完成であるということ。そして,いろいろな考えを刺激・触発するということ。というわけで,この日記も未完成ですが,この辺にしておきましょう。

「300」 ★★★☆☆
「スキャナー・ダークリー」 ★★☆☆☆

今好きな映画を選ぶとしたら

基本的に新しい映画を観ることにしています。もちろん,古い映画だって,私にとって新しければOK。

今好きな映画を選ぶとしたら,躊躇なく,クシシュトフ・キエシロフスキー監督の作品から数点選ぶでしょう。まずは,「デカローグ」(1988年)。そして,「アマチュア」(1979年)と「偶然」(1982年)。今の私の原点にある映画であり,これらの映画を観ると,私が映画に何を求めているのかよくわかると思います。

注目している現役の監督さんは,ざっと50人そこらいますが,キエシロフスキー直系のトム・ティクヴァ,ダニス・タノヴィッチ,そして,新大陸の親戚といった感じのスティーヴン・ギャガンやアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ等には,今後も大いに活躍して欲しいと思います。

それから,近年最も衝撃を受けたのは,クリストファー・ノーラン監督の「メメント」(2000年)。最高に面白かった! あれから7年。そろそろ(私にとって)「メメント」を超える作品が登場して欲しいものです。チャーリー・カウフマンの脚本(「アダプテーション」等)も面白い! よく気味の悪い映画,わけのわからない映画と言われるけれど,ダーレン・アロノフスキーの「π」(1997年)にも手ごたえを感じました。すみません,これらは,皆から認められる映画じゃないと思います。念のため。

この1年間で最も注目した新進気鋭の監督さんは,「カポーティ」のベネット・ミラーと,「善き人のためのソナタ」のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。今後の活躍が楽しみ。作品数は多くないけれど,トッド・フィールドにも大いに才能を感じます。

これから観てみたい映画としては,スティーヴン・ソダーバーグ製作のMichael Clayton。いつもソダーバーグの着眼点は面白く,いろいろなコラボや実験的なプロジェクトが進行していますね。そう言えば,「セックスと嘘とビデオテープ」(1989年)も一種キエシロフスキー(「アマチュア」)が変成したもの(エンディング・視点の転換)とも取れます。

それから,アン・リー,アルフォンソ・キュアロン,ヴァルテル・サレスの感性も大好きで,アン・リー監督の最新作Lust, Caution(色・戒)の公開を楽しみにしています。

トッド・ヘインズのI’m Not There(ボブ・ディランがいっぱい?)も絶対観たい!注目している映画,まだまだ沢山ありますが,折々触れていくことにしましょう。

ケトルさんの映画100選

2年位前のことです。ブログ・チャレンジという企画のもと,好きな映画100本を選んでみようと試みました。お勧め映画100本(つまり,誰からも好かれそうな映画)ではなく,自分の好きな映画や自分にとって意味のあった映画を洗い出す,一種自己探求的な試みでした。

奇特なことに,ブログの友4人が協力してくれて,楽しいコラボ企画になりました。また,それぞれの個性豊かなリストを,ここでも紹介させていただきました。

ブログの友ケトルさんのFILM100が完成しましたので,トラックバックの許可をいただき,以下に転載させていただきますね。結果のみならず,丁寧にじっくりと選んでいったプロセスや,プレゼンテーションもわかりやすくて,ケトルさんから学ぶところが大きく,また,お人柄が偲ばれるリストだと思います。作品の選択がインターナショナルで,私の好きな映画も沢山入っています。珠玉の名作といいますか,心に残る小作品も混じっているところに好感を持ちます。本当にお疲れ様でした!!!大変よいリストだと思います。
 
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以下,ケトルさんが選んだ「FILM100」完成リストです。(国別、年代別)

001|天井桟敷の人々 Les Enfants Du Paradis
   1944年|フランス|監督:マルセル・カルネ(Marcel Carne)

002|死刑台のエレベーター Ascenseur pour L’echafaud
   1957年|フランス|監督:ルイ・マル(Louis Malle)

003|大人は判ってくれない Les quatre cent coups
   1959年|フランス|監督:フランソワ・トリュフォー(Francois Truffaut)

004|わんぱく戦争 La Guerre des Boutons
   1961年|フランス|監督:イブ・ロベール(Yves Robert)

005|女と男のいる舗道 VIVRE SA VIE
   1962年|フランス|監督:ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)

006|軽蔑 LE MEPRIS
   1963年|フランス|監督:ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)

007|男と女 UN HOMME ET UNE FEMME
   1966年|フランス|監督:クロード・ルルーシュ(Claude Lelouch)

008|まぼろしの市街戦 LE ROI DU COEUR  
   1967年|フランス|監督:フィリプ・ド・ブロカ(Philippe de Broca)

009|自由への幻想 LE FANTOME DE LA LIBERTE
   1974年|フランス|監督:ルイス・ブニュエル(Luis Bunuel)

010|アデルの恋の物語 LE ROI DU COEUR  
   1975年|フランス|監督:フランソワ・トリュフォー(Francois Truffaut)
011|ラルジャン L’Argent
   1983年|フランス・スイス|監督:ロベール・ブレッソン(Robert Bresson)

012|汚れた血 MOUVAIS SANG
   1986年|フランス|監督:レオス・カラックス(Leos Carax)

013|グランブルー LE GRAND BLEU
    1988年|フランス|監督:リュック・ベッソン(Luc Besson)

014|ふたりのベロニカ La Double Vid de Veronique
   1991年|フランス|監督:クシシュトフ・キェシロフスキ(Krzysztof Kieslowski)

015|パリ空港の人々 Tombes du Ciel
   1993年|フランス|監督:フィリップ・リオレ(Philippe Lioret)

016|素敵な歌を舟はゆく ADIEU, PLANCHER DES VACHES!
   1999年|フランス・スイス|監督:オタール・イオセリアーニ(Otar Iosseliani)

017|やさしい嘘 DEPUIS QU’OTAR EST PARTI…
   2003年|フランス・ベルギー|監督:ジュリー・ベルトゥチェリ(Julie Bertucelli)

018|階段通りの人々 A CAIXA
   1994年|ポルトガル・フランス|監督:マノエル・デ・オリヴェイラ(Manoel de Oliveira)

019|パリ、テキサス Paris, Texas
   1984年|西ドイツ・フランス|監督:ヴィム・ベンダース(Wim Wenders)

020|ベルリン・天使の詩 Der Himmel Uber Berlin
   1988年|西ドイツ・フランス|監督:ヴィム・ベンダース(Wim Wenders)

021|グッバイ・レーニン! GOOD BYE LENIN! 
   2003年|ドイツ|監督:ヴォルフガング・ベッカー(Wolfgang Becker)

022|灰とダイヤモンド Popiot I Diament
   1958年|ポーランド|監督:アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)

023|愛に関する短いフィルム Krotki film o milosci
   1988年|ポーランド|監督:クシシュトフ・キェシロフスキ(Krzysztof Kieslowski)

024|バベットの晩餐会 Babette’s Feast Babettes Goestebud
   1987年|デンマーク|監督:ガブリエル・アクセル(Gabriel Axel)

025|野いちご Smuktron-Stallet
   1957年|スウェーデン|監督:イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman)

026|ミツバチのささやき El Espiritu De La Colmena
   1973年|スペイン|監督:ヴィクトル・エリセ(Victor Erice)

027|道  LA STRADA
   1954年|イタリア|監督:フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)

028|鉄道員 IL FERROVIERE
   1956年|イタリア|監督:ピエトロ・ジェルミ(Pietro Germi)

029|若者のすべて Rocco El Suoi Fratelli
   1960年|イタリア|監督:ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Bisconti)

030|山猫 IL GATTOPARDO
   1963年|イタリア|監督:ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Bisconti)

031|8 1/2 Otto e Mezzo
   1963年|イタリア|監督:フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)

032|テオレマ TEOREMA
   1968年|イタリア|監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)

033|暗殺の森 Il conformista
   1970年|イタリア・フランス|監督本:ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)

034|ひまわり I GIRASOLI
   1970年|イタリア|監督:ヴィットリオ・デ・シーカ(Vittorio De Sica)

035|木靴の樹 L’ ALBERO DEGLI ZOCCOLI
   1979年|イタリア|監督:エルマンノ・オルミ(Ermanno Olmi)

036|明日へのチケット TICKETS
   2005年|イタリア・イギリス|監督:エルマンノ・オルミ(Ermanno Olmi)/アッバス・キアロスタミ(Abbas Kiarostami)/ケン・ローチ(Ken Loach)

037|回転 The Innocents
   1961年|イギリス|監督:ジャック・クレイトン(Jack Clayton)

038|アラビアのロレンス Lawrence of Arabia
   1962年|イギリス|監督:デヴィッド・リーン(David Lean)

039|ケス Kes
   1969年|イギリス|監督:ケン・ローチ(Ken Loach)

040|時計じかけのオレンジ A Clockwork Orange
   1971年|イギリス|監督:スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)

041|さらば青春の光 Quadrophenia
   1979年|イギリス|監督:フランク・ロダム(Franc Roddam)

042|未来世紀ブラジル Brazil
   1985年|イギリス・アメリカ|監督:テリー・ギリアム(Terry Gilliam)

043|コックと泥棒、その妻と愛人 The cook, the thief, his wife & her lover
   1989年|イギリス・フランス|監督:ピーター・グリーナウェイ(Peter Greenaway)

044|ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ ROSENCRANTZ AND GUILDENSTERN ARE DEAD
   1990年|イギリス|監督:トム・ストッパード(Tom Stoppard)

045|父の祈りを In the Name of The Father
   1993年|イギリス・アメリカ|監督:ジム・シェリダン(Jim Sheridan)

046|ビフォア・ザ・レイン BEFORE THE RAIN
   1994年|イギリス・マケドニア他|監督:ミルチョ・マンチェフスキー(Milcho Manchevski)

047|フォー・ウェディング FOUR WEDDINGS AND A FUNERAL
   1994年|イギリス|監督:マイク・ニューウェル(Mike Newell)

048|秘密と嘘 Secret and Lies
   1996年|イギリス|監督:マイク・リー(Mike Leigh)

049|フル・モンティ The Full Monty
   1997年|イギリス|監督:ピーター・カッタネオ(Peter Cattaneo)

050|リトルダンサー Billy Elliot
   2000年|イギリス|監督:スティーヴン・ダルドリー(Stephen Daldry)

051|ベン・ハー Ben-Hur
   1959年|アメリカ| 監督:ウィリアム・ワイラー(William Wyler)

052|街の灯 City Lights
   1930年|アメリカ|監督:チャーリー・チャプリン(Charles Chaplin)

053|欲望という名の電車 A Streetcar Named Desire
   1951年|アメリカ|監督:エリア・カザン(Elia Kazan)

054|十二人の怒れる男 12 ANGRY MEN
   1957年|アメリカ|監督:シドニー・ルメット(Sidney Lumet)

055|黒い罠 TOUCH OF EVIL
   1958年|アメリカ|監督:オーソン・ウェルズ(Orson Welles)

056|サイコ PSYCHO
   1960年|アメリカ|アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)

057|ウェストサイド物語 WEST SIDE STORY
   1961年|アメリカ|監督:ロバート・ワイズ(Robert Wise

058|博士の異常な愛情 Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
   1964年|アメリカ|監督:スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)

059|バニシング・ポイント VANISHING POINT
   1971年|アメリカ|監督:リチャード・C・サラフィアン(Richard C. Sarafian)

060|ゴッド・ファーザーⅠ The godfather
   1972年|アメリカ|監督:フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)

061|こわれゆく女 A Woman Under the Influence
   1974年|アメリカ|監督:ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes)

062|ゴッド・ファーザーⅡ The godfatherⅡ
   1974年|アメリカ|監督:フランシス・フォード・コッポラ(Francis Ford Coppola)

063|カッコーの巣の上で One flew over the cuckoo’s nest
   |1975年|アメリカ|監督:ミロス・フォアマン(Milos Forman)

064|タクシードライバー Taxi Driver
   1976年|アメリカ|監督:マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)

065|オーメン THE OMEN
   1976年|アメリカ|監督:リチャード・ドナー(Richard Donner)

066|マンハッタン MANHATTAN
   1979年|アメリカ|監督:ウディ・アレン(Woody Allen)

067|グロリア GLORIA
   1980年|アメリカ|監督:ジョン・カサヴェテス(John Cassavetes)

068|E.T. E.T. The Extra Terrestrial
   1982 年|アメリカ|監督:スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)

069|トッツィー Tootsie
   1983年|アメリカ|監督:シドニー・ポラック(Sydney Pollack)

070|ストレンジャー・ザン・パラダイス Stranger Than Paradise
   1984年|アメリカ|監督:ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)

071|アマデウス AMADEUS
   1985年|アメリカ|監督:ミロシュ・フォアマン(Milos Forman)

072|コーラスライン A Chorus Line 
   1985年|アメリカ|監督:リチャード・アッテンボロー(Richard Attenborough)

073|存在の耐えられない軽さ The Unbearable Lightness of Being
   1988年|アメリカ|監督:フィリップ・カウフマン(Philip Kaufman)

074|忘れられない人 Untamed Heart
   1993年|アメリカ|監督:トニー・ビル(Tony Bill)

075|恋はデジャ・ブ GROUNDHOG DAY
   1993年|アメリカ|監督:ハロルド・ライミス(Harold Ramis)

076|ショーシャンクの空に The Shawshank Redemption
   1994年|アメリカ|監督:フランク・ダラボン(Frank Darabont)

077|ファーゴ Fargo
   1996年|アメリカ|監督:ジョエル・コーエン(Joel Coen)

078|セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ CECIL B. DEMENTED
   2000年|アメリカ|監督:ジョン・ウォーターズ(John Waters)

079|ゴスフォード・パーク GOSFORD PARK
   2001年|アメリカ|監督:ロバート・アルトマン(Robert Altman)

080|ムーラン・ルージュ MOULIN ROUGE!
   2001年|アメリカ|監督:バズ・ラーマン(Baz Luhrmann)

081|サイドウェイ SIDEWAYS
   2004年|アメリカ|監督:アレクサンダー・ペイン(Alexander Payne)

082|オリーブの林をぬけて ZIR-E DERAKHTAN-E ZEYTOON
   1994年|イラン|監督:アッバス・キアロスタミ(Abbas Kiarostami)

083|黄色い大地 黄土地 
   1984年|中国|監督:チェン・カイコー(陳凱歌)

084|山の郵便配達 那山 那人 那狗
   1999年|中国|監督:フォ・ジェンチィ(霍建起)

085|秋菊の物語 秋菊打官司
   1992年|中国・香港|監督:チャン・イーモウ(張藝謀)

086|大丈夫日記 大丈夫日記
   1988年|香港|監督:チョー・イェン(楚原)

087|欲望の翼 阿飛正傅
   1990年|香港|監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)

088|the EYE[アイ] 見鬼
   2001年|香港・タイ|監督:オキサイド・パン(彭順)/ダニー・パン(彭發)

089|愛情萬歳 愛情萬歳
   1994年|台湾|監督:ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)

090|羅生門  1950年|日本|監督:黒澤明

091|東京物語 1953年|日本|監督:小津安二郎

092|浮雲  1955年|日本|監督:成瀬巳喜男

093|砂の女  1964年|日本|監督:勅使河原宏

094|けんかえれじい  1966年|日本|監督:鈴木清順

095|男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 1983年|日本|監督:山田洋次

096|家族ゲーム  1983年|日本|監督:森田芳光

097|台風クラブ 1985年|日本|監督:相米慎二

098|マルサの女 1987年|日本|監督:伊丹十三

099|シベリア超特急 1996年|日本|監督:MIKE MIZNO

100|打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 1996年|日本|監督:岩井俊二

 

Art Spider Liveに寄せて

アーティスト西村記人さんの展覧会「アートスパイダー 西村記人展」が,香川県文化会館で開催中ですが,9月19日(水)に,実演LIVEが開催されるとのことで,8人のグループで行ってきました。図録の翻訳をお手伝いしたご縁で,貴重なアート体験をすることができました。

西村記人氏と3人のグループによるLIVEペインティング,山下洋輔氏の率いるニュー・カルテットのジャズ,大倉正之助氏(重要無形文化財総合認定保持者)の鼓,PIRAMIさんのチェロにKETZさんのダンス,松浦俊夫氏のDJと,まさに,異種アーティストを一堂に会する異色イベント。

西村氏のLIVEペインティングは,日本はもとより,ロンドン・ツアー,Virgin(リチャード・ブランソン氏のレコード会社)のパーティー,ゲント(ベルギー)の音楽祭,ミュンヘン,カンヌ(モナコ王室からの招聘)でLIVEと,海外でも注目を集めているそうで,これだけのメンバーを集めてのLIVEペインティング,見逃すわけにはいきません。

LIVEの前半はソロで,それぞれの力量の披露。後半はコラボです。まずは,鼓から。能の様式美を凝縮した物凄い存在感です。赤のフラッド・ライトに包まれた大倉氏が打つ正確無比な鼓は,鬼気迫るものがありました。その後,コラボでも全体を引き締める要として,重要な役割を果たします。Awesome!

大倉氏の次は,PIRAMIさんのチェロとKETZさんのダンス。会場に流れる空気が,ふんわりと変わります。低く流れるチェロのうねりに合わせて,KETZさんのダンスは,シルエットとして背後のスクリーンに映し出されています。インドネシアの影絵人形芝居(ワヤン・クリ)のように,ゆるゆると体をくねらせ,これから始まる不気味な饗宴を暗示しているかのようです。

ソロの締めくくりは,山下洋輔ニュー・カルテット。図録では,山下洋輔氏が西村記人氏に寄せた文章等の英訳を担当しましたが,『ドシャメシャ演奏』とか,訳しきれない山下氏独特の表現を生かすためには,どうすればいいのだろうかと頭をかかえてしまいました。そのうち,こりゃ翻訳もドシャメシャでいくしかないと思い始めると,最高に楽しいプロジェクトに。いやぁ,面白かった!……というわけで,そのドシャメシャ演奏とやらを,じっくり聴かせてもらおうと楽しみにしていたのです。

図録の締切り前は大嵐のようで,手に汗を握る大接戦(?)でしたが,今となって振り返ってみると,それも楽しい思い出です。台風の日に,西村さんのアトリエで,学生時代の合宿さながらデザイナーや学芸員がひしめき合う中,校正や全体的な翻訳のチェックをしました。外は嵐,中も嵐。西村氏のLIVEさながら,エネルギーの塊が混沌としていて,大変面白かったです。

その場の空気を感じ取りつつ体全体で描くLIVE PAINTINGは,半透明の大きなスクリーンに踊る絵。ジャンルを超えた音楽,ダンス,ペイントが,核融合と分裂を繰り返し爆発する。そんな感じです。相乗と相殺。シナジーと無。それぞれの色が混じり,消えていく。

一瞬のきらめきを捕らえよ,アーティスト!
見逃すな,観客!

美術的には,ジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングを垂直にして,コラボが実現し,かつ制作過程を見ることができるといった感じです。作品もオール・オーヴァーで,フラクタルかつ独特のリズムが生み出す実験的な描画行為そのもの。同時に,先住民やチベット僧の描く砂絵のはかなさにも似た世界。そういった意味では,むしろ「香り」ないし「匂い」の美学に近いものがあるかもしれません。

アートスパイダーのドシャメシャ度は,強いて言うならば,奇想天外なシルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)に匹敵するもので,雲を集め,嵐を呼ぶエネルギーの渦に圧倒されました。シルクが綿密に演出されたものであるのに対して,何でもアリのアートスパイダーは即興性や偶然性を生むものという違いはありますが,どちらも独創的であり,大道芸人が織りなす一夜限りの夢のような世界。

One Night Only。会場の準備が遅れているからと,入口にずらっと並んだ人々。まるで噂のクラブ。会場に足を踏み入れると,心地よいDJサウンドが流れ,適度な音量が会話を促進し,会場をすっぽり包んだ照明がクラブakaディスコ風。スクリーンには,雲と蜘蛛。一昔前にKPT(カイパワーツール)で遊んだような画像が,モーフィングしながら浮かんでは消える。

そうそう,展覧会の一環として上映されている大木裕之監督によるドキュメンタリー「Who is Nishimura」を,一足先に観てきました。なんつーのか,アートは一種の排泄行為であるといった感もありますが,短いながら,光が踊る様子や軌跡に重ねられた,西村氏のLIVE PAINTINGの捉え方は面白く,不思議なことに真髄に迫るものがあると感じました。

図録の印刷締め切りギリギリ直前。週末の印刷会社で,西村軍団と最後の校正と点検を終え,皆で豚カツを食べに行った夏の昼下がり。炎天下,老人が自転車で通り過ぎる。夏休みの課題を抱えた画学生が通り過ぎる。そして,蜘蛛の糸をたらし,夢を紡ぐ西村氏が,目の前で静かに佇んでいた。……彼の中で,どのような嵐が生まれつつあったのか知る由もありません。人生夢の如し。でも,このArt Spiderが紡ぐ夢は,面白い夢のようです。Life is but a dream.

 

P.S. 一緒に行った8人のメンバーは,それぞれの想いを胸に帰宅したわけですが,同じ時空を共有・体験し,話すことができる人がいるのは本当にありがたいものです。8人のうちブログをアップしている方の紹介をしておきますね。同じイベントをどのように見たのか興味深いものです。こちらもどうぞ!

1 親友かつアーティストTAKAMIさんの2007年9月19日付けの日記「平日オフのアートな1日♪」
http://blog.goo.ne.jp/pf-vo-takami/e/e6b4962a11b5cf44cdefd62a35f20ac1

2 ミクシィにアクセスがある方は,マイミクtarumiさんの2007年9月19日付けの日記「ART SPIDER with 山下洋輔」も。LIVE直後にアップされた臨場感の伝わってくるブログです。

最後になりましたが,TAKAMIさんとたっくん,tarumi氏,直ちゃん,ジャッキーさん,K氏,H氏,Thank you so much!  I really had a great time!

Hang Around and Enjoy Your Visit!

相変わらず日中は蒸し暑い日が続いておりますが,皆様,いかがお過ごしでしょうか。9月も半ばとは言え,暑さが衰えることなく,当地では夏の花がまだ勢いよく咲いています。サルスベリ,フヨウ,アサガオ,ヒマワリ……。

まるで夏が永遠に続くかのようですが,稲穂が日々色付き熟していく様子に,季節の移ろいを感じます。いつの間にか,蝉しぐれや蛙の大合唱が虫の音に。そして,電車の窓から,空地にコスモスの花が咲いているのが見えます。

最近,この半年位に公開されたかDVDリリースした映画のレビューを書いています。書いた順に並べてみると,こんな感じです。

「バベル」 ★★★★★
「あなたになら言える秘密のこと」 ★★★★☆
「ゴーストライダー」 ★★☆☆☆
「ナイト ミュージアム」 ★★☆☆☆
「デジャヴ」 ★★★☆☆
「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」 ★★★★☆

皆さんが最近観た映画で,面白いものがありましたら,教えてくださいね。さて,次のレビューは何にしようかな?……もう少し続けることにしましょう。

それから,只今,Windows Live Spacesのトップページで,ブログの写真を紹介していただいております。It is so amazing, isn’t it?  Welcome to my Spaces!  Hang around and enjoy your visit.  Many thanks!

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?

米国大企業の不正・隠蔽・会計粉飾・破綻の証言を記録した貴重なドキュメンタリー映画。急成長を続け優良企業と見なされてきたエンロンの実情の一端がここにある。

かなり致命的な経営多角化(水平的統合と垂直統合)が進んでいたが,表向きは新しいタイプの革新的な会社だった。テクノロジーを駆使して,主に天然ガス・石油・電力等,エネルギー関連やITの先物取引をしていた会社だ。大半がわかりにくいデリバティブだった。

原題「Enron: The Smartest Guys in the Room」(一番アタマのいいヤツ)とは,エンロン社の頂点に立つCEOケン・レイ(創設者)とCOOジェフ・スキリングのことを指す。もちろん,皮肉と怒りが込められたタイトルだ。

エンロン社が裸の王様であることをスッパ抜いたのは,米国経済新聞ウォールストリート・ジャーナル(WSJ,2001年10月17日号)である。『エンロンの収益は一体全体何なのか?』収益構造に疑問を抱いていた記者2人(John EmshwillerとRebecca Smith)が,CFOアンディ・ファストウの芳しからぬ会計操作に警報を鳴らした。SEC(米国証券取引委員会)も大いに注目した。

WSJの記事から1週間,10月23日,CEOケン・レイは,まだファストウを擁護していた。同日,会計事務所アーサー・アンダーセンでは,証拠隠滅ならぬエンロンの会計書類をシュレッダーにかけ,裁断廃棄処分に追われていた。翌日,10月24日には,レイは手のひらを返して,この最高財務責任者ファストウをクビに。

エンロン社の企業資産は16年で6.5倍になり,1985年の売上高100億ドル($10 billion)から,全米第7位,約650億ドル($65billion)に。マーケットバリュー(時価総額)は,約700億ドルと言われていた。アメリカで最も働きやすい会社の上位にランクされ,6年間連続,アメリカで最もイノベーティブな会社(フォーチュン誌)にも選ばれた。優秀なエリート社員2万1千人を抱え,憧れの会社になっていた。

ところで,100億ドル($10 billion)なんて言われても,日常生活に無縁の数字だし,ピンとこないので,単純計算として,1ドル=100円としてみると,100億ドル=1兆円になる。この事件を日本に移行すると,ホリエモンをいやがおうでも思い出す。エンロン社事件から約4年,2006年1月に,ライブドアの不正経理が発覚した。よく比べられるが,ライブドアは約50億円,エンロンは何兆円もの不正経理が絡んでいるので,スケールが全く違う。

最盛期当時,エンロン社の株はブルーチップ(優良株)と,こぞって証券アナリストから強く推奨(Strong Buyと)されていた。2000年8月23日に90.56ドルまで上った株価だったが,2001年11月28日には1ドル以下に暴落した。そして,WSJの記事から僅か1か月半,12月2日に,エンロン社は,「チャプター・イレブン」(連邦倒産法第11章)を申請したのである。

一方,エンロン社の会計監査を担っていたアーサー・アンダーセンは,全米で5本の指に入る老舗の名門会計事務所であったが,エンロン社のアドバイザーとして,秘かに犯罪スレスレの危ない綱渡りを続けていた。会計書類の廃棄処分というあからさまな罪を犯し,翌年2002年6月15日に有罪判決を受け,全米に散らばるオフィスで働いていた約9万人の職員が失職した。

エンロン社のことを語るうえで忘れてはならないのは,SPE(Special-Purpose Entity 特別目的事業体)と呼ばれる子会社の設立だ。エンロン社の会計2重構造,すなわち決算に反映しなくていい(連結決算対象外の)子会社が3千もあったそうだ。ファストウ等,SPEから高額の報酬をポケットにねじ込み,アーサー・アンダーセン等も手数料という甘い汁を吸っていた。後に,左回りになってくると,これらのSPEを駆使して,エンロン社の取引損出を簿外に隠蔽することになる。

厳密には,WSJ記事が出る前日(10/16)に提供されたエンロン社の2001年第3四半期の記者資料と説明の矛盾(10億ドル)と,ファストウのSPE操作を嗅ぎつけたことから,エンロンという虚構の崩壊が始ったのだ。

MTM(Mark-to-Market 時価会計)
デリバティブ
循環取引
エネルギー市場の規制緩和
2000年のカリフォルニア電力危機
401k(米国企業年金制度)

2001年2月にケン・レイが引退し,CEOの座をジェフ・スキリングに明け渡した。そのスキリングが,約半年後の8月14日に辞任する。その1か月前には,退職の相談をしていたそうだが,2000年5月~2001年9月の間に,スキリングは,7,000万ドル($70 million)相当の自社個人株を売却していた。まさに,沈みかけた船を見捨てたネズミだ。スキリング,レイ,ファストウ等が,インサイダー取引に携わっていたことも知られている。

エンロンが本社を置くヒューストンに20年以上住んでいたので,リアルタイムでエンロン社の興亡崩壊を目の当たりにした。このドキュメンタリーの冒頭に登場するエンロン社の副社長クリフォード・バクスターの自殺(1/25)の報道も地元のニュースで見た。エンロン社の社員が路頭に迷った姿もTVに映し出されていた。退職後の夢をエンロン社株に託した401kが,一夜にして崩壊した。カリフォルニアの停電に,不気味な無力さを感じた。

エンロンは一体何で儲けていたのかという疑問が,この映画の核にあり,その答えこそが,この作品の真価なのではないのかと思う。いろいろと思うところもあれば,まだまだ書き足りないが,この辺にしておこう。

(H19年度上半期映画レビュー06 )
「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」 ★★★★☆

ナイト ミュージアムでデジャヴ

今夜は2本立て。親友BOOさんと一緒に観た映画から。まずは,「ナイト ミュージアム」。家族で楽しめる映画だと思います。まるでテーマパークに行ったような感じ。しかも,決して古いタイプの遊園地ではなく,大型資本の入った最新のテーマパーク。あんまり深く考えず,enjoy the ride!

もう1本は,「デジャヴ」。気味の悪い映画と,BOOさんのひんしゅくを買ってしまいました。いやはや,失敗,失敗。トニー・スコット監督にしては,それ程でもないだとか,前作「ドミノ」に比べると,かわいいものだなどと,ついつい口走ってしまって,本当にごめんなさい。割と口コミがよかったので。つい。ジェリー・ブラッカイマー(製作)独特の緻密かつ精巧でリアルな映像が,CSIし過ぎていたかなぁ。

ただ,主演のデンゼル・ワシントンは,よかったと思います。彼じゃなければ,きっとウソ臭くなっていたと思われるシーンが結構あって,「どうする?デンゼル」と,ハラハラドキドキ。

それから,BOOさんに,ヴァル・キルマーが太っていると,お叱りを受けるのではないのかと,ハラハラドキドキ。ヴァル様,同じくトニー・スコット監督の「トップガン」(1986年)じゃ,アイスマンだったんだぜ!

舞台は,2年前にハリケーン・カトリーナで大打撃を受けたニューオリンズ。街に活気を取り戻し,被害に遭った人々を励ますという趣旨と意図もよかったと思います。実際に,ニューオリンズは私の大好きな街で,BOOさんと,あそこはどうのこうのと,訪れたことのある場所を思い出しながら見ることができました。やっぱり,誰かと一緒に映画を観るのは楽しいものですね。

ああ,あの辺りからswamp tourが出ていただとか。通常,I-10 Westや90 Westからニューオリンズ入りしたのですが,これはどの橋だろうかと。ミシシッピ川が蛇行し,湿地帯が続き,ワニやザリガニやナマズのケイジャン・カントリーやプランテーションのあたりも。ケイジャンはフランス系ということで,仏語の混じった英語を話し,お料理も独特で美味しい!BOOさんと一緒に,ジャンバラヤにガンボー作りましたっけ。

そこで一言!字幕翻訳の方,どうかBayou(バイヨウもしくはバイユーと発音)を『入り江』と訳さないでください!!!入り江の方に流れ着くこともあるかもしれませんが,南部独特の泥の河のことなんです。ほら,カーペンターズのヒット曲「ジャンバラヤ」にも,”…on the bayou”って出てくるでしょ。この曲,ハンク・ウィリアムズのカバーなんですが,まさにケイジャン・カントリーのことを歌っているのです。

じーーーっと,bayouのスペルを見ると,確かにbay(湾,入り江)の3文字が。でも語源は,アメリカ先住民チョクトー族(Choctaw)の言語bayukから来ているそうで,その意味は小さな川のこと。(※Wikipediaから。)つまり,語源的には,bay(湾,入り江)とは全く関係ないわけです。

そこで,なぜ入り江と訳したのかと思って,辞書を引いてみると,ありました。ついでに英語圏の英英辞書で引いてみると,全く同じ説明もあったので,多分,この部分だけを引用・翻訳したのだと思います。でも,これじゃ狭義過ぎ!アメリカ南部を旅したことのある人なら,すぐに気付くでしょうし,入り江と訳しちゃモグリ過ぎ!Bayouは土地の名前にも沢山出てきますし,南部のキーワードですよ!!!

Bayouのほとり(on the bayou)で,ジャンバラヤにガンボー食べながら,Deja vu(タイトルもフレンチでしたか!!!)といきますか。ついでに,ジョニー・ブレイズ(映画「ゴーストライダー」)を呼んできて,カーペンターズを聴こうかな。そう言えば,「イージー・ライダー」(1969年)の目的地も,マルディグラのニューオリンズでしたっけ。

そして,この映画(「デジャヴ」),一種のタイム・トラベルものですが,従来のタイムマシーンとは違ったコンセプトとヴィジュアライゼーションは面白かったと思います。

(H19年度上半期映画レビュー04 )
ナイト ミュージアム ★★☆☆☆
デジャヴ ★★★☆☆

ゴーストライダー

真面目な作品が2本続いたので,ちょっと息抜きタイム。

アメコミ(マーヴェル・コミック)原作の実写版で,100%漫画的。スリムになったニコラス・ケイジ主演。カーニバル(※アメリカでは簡易移動アミューズメント・パークのこと)で,父親とバイクのスタント・ショーをしています。カーニバルで働く人々は,通称カーニーと呼ばれていますが,寅さん(「男はつらいよ」)シリーズのような巡業にまつわる見知らぬ土地での人情と哀愁が付き物です。

舞台設定,つまり寅さんで言う葛飾柴又(本拠地)は,テキサスとアメリカ南西部の荒野なんですが,何と言いますか,ちょっと違うのです。ダラスでもなく,オースティンでもなく,ヒューストンでもない。もちろん,サン・アントニオでもありません。ヒル・カントリーの歴史的な墓地に似ている所も出てくるけれど,規模が違う……。そこの墓守がサム・エリオットで,昔のテキサス・レンジャー(騎馬警備隊)と,あまりにも決まり過ぎ!!!

答えは,オーストラリア・ロケだそうで,よく,昔のアメリカ西部に似ている(特にアウトバックは)という(アメリカ人の)コメントを聞きますが,なるほど!本当に懐かしい感じがしました。そして,テキサスの州花はブルーボネット(ルピナスの一種で青い花)ですが,丘に薄ラベンダー色の花が咲いていたり,ちょっと現実的でないところが,漫画的でいいのかも。

ところで,ニック・ケイジの扮するゴーストライダーことジョニー・ブレイズ。不思議とピッタリなんです。エルビスもどきのボディ・ランゲージは,ちょっとover the top(マジですか?)で,どこか情けなくって,でも正直で,puppy-dog eyes(仔犬のような瞳)で見つめられると,何だか放っておけないタイプ。

そして,70年代に一世を風靡したイーブル・カニーブルを彷彿するような,派手なバイクのスタント。ジョニーは,恐怖を克服するためにカーペンターズを聴いたり,音楽的にもあの頃なんですね。父親を救うために悪魔に魂を売るのですが,その名もメフィストフェレス。「イージー・ライダー」(1969年)のピーター・フォンダがメフィスト役とくれば,もう後は野となれ山となれ。

その他の悪役は「アンダーワールド」風ですが,あそこまでバイオレントでもグロくもありません。まぁ,自分の内なる悪との対峙,自分との闘いなのかもしれませんが,戦う価値のある手強いライバルが欲しいところ。

アメコミの映画化経験有りのマーク・スティーヴン・ジョンソン氏が監督。脚本家としては,大変よいシナリオを書いていたので,もう少し……と思ったけれど。監督ぅ,これってコメディなんでしょうか?結構,内輪受けのような気もしますが。

炎上する改造バイク,骸骨に皮ジャン,鎖,西部……とくれば,こんなもんですかね。CGや合成映像はスムーズで,これまたover the top(マジですか?)

(H19年度上半期映画レビュー03 漫画的)
ゴーストライダー ★★☆☆☆