第57回写真展 秋の瀬戸内紀行2007
2007/11/26 3件のコメント
勤労感謝の3連休、いかがでしたか。アメリカでは、サンクスギビング(感謝祭)の週末でしたね。こちらは秋晴れの3日間。いいお天気に恵まれ、紅葉もピークを迎えています。いつもブログを訪問してくださる皆様に感謝をこめて、11月に撮った写真と共に、瀬戸内紀行をまとめてみました。
まずは、岡山県瀬戸内市で開催された瀬戸内バルーンフェスティバル2007から始めることにしましょう。学生時代の友人の故郷、邑久(おく)町は、3年前に牛窓町と長船町と合併し、瀬戸内市が誕生したそうで、バルーンフェスティバルは、吉井川の河川敷で開催されました。青空に鮮やかな熱気球が浮かび、何だかワクワクしてきます。遠くからでも見えますし、川の土手から姿を現すと、走って見に行きたくなります。大人も童心に還って、楽しい一日を過ごすことができました。
また、このあたりに竹久夢二の生家があり、以前、友人が案内してくれましたが、夢二が少年時代を過ごしたという山野の美しさに、再び感動しました。のんびりとした田舎の風景がよく、吉井川に映える黄葉が夢のよう。備前福岡まで足をのばすと古い町並みが残り、長船(おさふね)には、平安時代から名刀を生み出した鍛冶の技が、今でも息づいています。
夕暮れ時になると、熱気球を一斉にライトアップする「バルーンイリュージョン」の準備が始まり、今度は吉井川の対岸から見ることにしました。だんだん冷え込み、暗くなるまで待てるかどうか不安になってきましたが、お隣で写真を撮っていたカメラマンから使い捨てカイロをいただき、身も心もぽっかぽか。お名前もお聞きしませんでしたが、どうもありがとうございました!!!
カウントダウンでバルーンイリュージョンが始まります。鏡のような水面に映し出され、暗闇に浮かぶ姿に息をのみました。その美しさに胸が震えます。見ることができてよかった!!!
それでは、少し熱気球メモ。立ち上る煙突の煙から、温めた気体を袋につめて飛ぶ着想を得たのはモンゴルフィエ兄弟(フランス)。ルイ16世とマリー・アントワネットの時代です。1783年に有人飛行に成功し、発明者の名前に因みmontgolfiereが、熱気球という名詞としてフランスで使われています。
ジュール・ヴェルヌ(仏)の「八十日間世界一周」(1872年)は、ビクトリア朝時代の小説ですが、近年、 気球による無着陸世界一周飛行のレースが展開されたことを覚えていらっしゃる方もいることでしょう。ハイテク素材を駆使し、1999年の3月に、約1/4の時間(19日21時間55分)で世界一周を達成しました。ヴェルヌの小説から127年です。ちなみに、日本の熱気球の初飛行は1969年だそうで、瀬戸内地方で初めて気球が飛んだのは、このバルーンフェスティバルが開催されている吉井川の河川からだったそうです。
なお、瀬戸内バルーンフェスティバルに参加している気球は高さ約20メートルだそうで、球皮(エンベロープ)を膨らませるため、液体プロパンガスを一気に加熱するバーナーの燃焼時に爆音と炎が出ます。気球の無重力状態から静けさを感じますが、ガスを燃焼させるため、ゴーーーっと大きな音が出るのに驚きました。しかしながら、炎のおかげで夜は暗闇に照らし出され幻想的です。気球は、気流が安定している早朝や夜間飛行に適しているそうです。
帰宅後、熱いお風呂に入って瞼を閉じると、色とりどりの気球や夢のような景色が浮かんでは消え、いい一日を追想しながら眠りにつきました。
次は、紅葉の小豆島(しょうどしま)を訪れることにしましょう。小豆島は瀬戸内海で二番目に大きな島。(淡路島に次ぐ。)周囲約140キロ、人口3.3万人。高速艇も出ていますが、のんびりフェリーで高松から約1時間。「二十四の瞳」、寒霞渓の紅葉、オリーブ、そうめん、醤油づくり等で有名な島です。
まずは、お猿さんのいる銚子渓に。途中、大観音が見えます。子どもの頃、妹がポケットに入れていたキャラメルを、猿に盗られて怖い思いをしたトラウマの場所ですが、今では理解が進み、何も持っていないと手のひらを見せるように指導してくれました。ここでも人間との対立ではなく、共存が大切なのだと感じます。
銚子渓には約500匹の猿がいるそうですが、ボス団十郎の率いるAグループ(300匹)と、トラさんの率いるBグループ(200匹)があり、写真に写っているのはトラさんのグループです。顔が赤くなると一人前だそうで、ちょうど繁殖期で気が立っているため、注意するようにとのことでしたが、今回は事なきを得て楽しい一時を過ごしました。
寒霞渓は紅葉の名所と聞いていましたが、納得。見事な眺めを堪能しました。次は、「二十四の瞳」の舞台になった岬の分教場に向かいます。小説を書いた壷井栄の生まれ故郷でもあり、主人公、大石先生が自転車で通ったという海岸線の風光明媚な景色が何とも爽やか。昭和3年から戦後にかけて、女教師と子どもたち(12人の生徒)の絆が真摯に描かれています。
「二十四の瞳」は、何度も映画化、TV映画化されていますが、1954年に公開された木下恵介監督、高峰秀子主演の映画が始まりです。浅間義隆監督、田中裕子主演で、1987年に再び映画化された時のロケ地が、映画村として残されています。敷地内に坪井栄文学館もあり、昭和初期の民家や学校、海辺の五右衛門風呂、ボンネットバス(子どもたちがケガをした先生に会いに行く時に、先生を見つけたバス)等が再現されています。
ここで、コブダイ(魚)に餌をやることもできます。輝く海とコスモスの咲き乱れる懐かしい空間でした。また、土庄港には、「二十四の瞳」を題材にした有名な『平和の群像』があります。
壷井栄は1899年に醤油の樽職人の五女として生まれ、近所に住みついたお遍路さんの子どもと噂される二人の孤児を父親が引き取り、12人の兄弟姉妹の一人として育ちました。父親が借金の証判をしたため、12歳の時に破産。「二十四の瞳」は、53歳の時に発表した小説です。写真を見ると、「お母さん」といった感じの方ですが、子どもはいなかったそうです。喘息のため、1967年に67歳で亡くなりました。最期の言葉は、『みんな仲よく』。
瀬戸内市の牛窓もオリーブで有名ですが、小豆島は、日本で初めてオリーブの栽培に成功した地だそうで、来年で100周年を迎えるそうです。ギリシャのミロス島と姉妹都市提携を結び、眺めのよい小高い丘にあるオリーブ公園にはギリシャ風の建物が見えます。近くには孔雀園があり、美しい鳥が放し飼いになっていました。小顔に長い首、つぶらな瞳……。手塚治の「火の鳥」を思い出します。それから、ちょっと西テキサス(ビッグべンド)のような景色も見つけて、びっくり。
そろそろ、土庄港に戻ることにしましょう。世界で一番狭い海峡と認定(ギネスブック)されている土渕海峡を渡りますが、たったの数歩で渡ることができます。海峡というイメージからほど遠く、小さな川のようですね。
さて、島とは何なのでしょうか。少し調べてみました。大陸(オーストラリアより大きな陸地)と区別され、日本の場合、本州だって全て島なんですよね。島の定義は3つ、自然に形成された陸地であり、水に囲まれていること、満潮時に水没しないこと。(海上から常に1m以上出てなくてはなりませんし、1本でも木が生えていなければ、岩と見なされるそうです。)
今度は直島を訪れることにしましょう。高校時代のバンド仲間ハマさん、アヤ、マヨちゃんと行ってきました。島全体がアートしています。小豆島行きと同じく、高松からフェリーで約1時間。まずは、草間彌生さんの「赤かぼちゃ」が宮浦港で出迎えてくれます。勝手にladybug(てんとう虫)と呼んでいますが、記念撮影に人気のスポットです。春に来た時は島つつじが満開でしたが、今回も晴天に恵まれ、屋外でアートを楽しむのに最適でした。
直島スタンダードIIで公開されたインスタレーション(古い民家を使った現代美術展)が、新たに家プロジェクトに加わり、アートが地域の空間に益々溶け込んでいます。
以前も書きましたが、ジェームズ・タレルの南寺はインパクトがあります。可視可能な僅かな光を使った作品で、言葉でも写真でも表現することができず、まさに体験するアート。地中美術館内にもタレルの作品がいくつかあり、「オープン・フィールド」は補色のコンセプトとスロープ(なだらかな斜面)を使った作品で、光の異空間に足を踏み入れます。まるでTVの中に入ったようでした。
そして、家プロジェクトの第一号、「角屋(かどや)」に設置されたSea of Timeも素晴らしい。宮島達男さんの作品は、仄暗い民家の床一面に水を張り、125個のLEDデジタルカウンターの数字が明滅。それぞれの発光ペースが違っていて、まるで人生を比喩・示唆しているようです。もちろん見る人によって様々な受け止め方ができるわけですが、「急ぐことはない、自分のペースで生きろ」と聞こえてくるようでした。
安藤忠雄氏の設計した地中美術館は、建物自体がアートであり、作品と展示空間と建物が一体と化し、独特の美学(aesthetics)を体感できるようになっています。沢山の作品が所狭しと並べられている従来の美術館とは全く対照的なコンセプトで、ひとつの作品をじっくり見せる究極のスペースとは、いかなるものかと考えさせられました。
いやぁ、充実した一日でした。ハマさん、フェリーの中の会話も盛り上がり、めちゃ楽しかったです。パーフェクト・ストームならぬ瀬戸の凪はPerfect Day!(楽屋落ち)
それから、Janus words(auto-antonyms もしくはamphibolous words)と呼ばれる両面語や矛盾語の話ができて、as good as it gets! Janusは二つの顔を持つというローマ神ヤヌスに由来し、1月の語源(January)にもなっています。よく西洋で、大晦日から元旦にかけてのイメージとして、赤ちゃんを肩に乗せた老人が描かれていますが、古くて新しいものは、最大(12、終わり)が最小(1、始まり)になるもの。また、泣き笑いの仮面が演劇のシンボルになっていることも思い出します。同時に正反対の意味を持つ語、あべこべ語、何か思い付きましたか?
それでは、四国の屋島(※今では陸続きで島ではありませんが、メサ地形を代表するテーブル型の山)から瀬戸内海を眺めてみることにしましょう。高松のランドマークであり、源平の古戦場でもあります。眼下に、鬼が島としても知られる女木島、そして、2月に水仙を訪ねた男木島が見えますね。女木島へは赤いフェリー(めおん)で高松から約20分、男木はさらに20分。小さな島を訪れるのも楽しいものです。コンビニはありませんが、海と空の青さを満喫できます。
遠くに瀬戸大橋が架かっているのですが、マリンライナーで橋を渡り、高松から岡山へ約1時間で行くことができます。以前は連絡船で本州と四国を結んでいましたが、今では鉄道、車、フェリー、そして飛行機の選択があります。
最後に、職場と家の近所で見つけた紅葉を紹介させてください。身近なところにも季節の美しさを感じます。
フォトアルバムで、「第57回写真展 秋の瀬戸内紀行2007」を開催中です。よろしければ、ご覧になってくださいね。
1 瀬戸内バルーンフェスティバル2007(写真001~081)
2 紅葉の小豆島(写真082~183)
3 アートの島 直島(写真184~232)
4 屋島からの眺め等(写真233~248)
5 近所で見つけた秋(写真249~293)