ダイアローグ第1夜
2006/04/30 2件のコメント
久しぶりのブログです。さて,どこから始めましょうか。まずは,先週末にお邪魔させていただいたTAKAMIさんのブログのトラックバックからいきましょう。
「恋愛、芸術、政治、ビジネス、母親… 話は尽きず、お泊りいただいて、日曜の夕方まで喋り続けました。」
これは,いつもながら最高ですね。お互いにアートという共通項があるのは有難く,分野は違えども,と言いますか,分野が違うので新鮮ですし,よい刺激になります。4月22日が23日に日付が変る頃に交わされた会話(ダイアローグ)をもとに,暫くブログを書いてみようと思います。
TAKAMIさんのコメントの中で興味深かったのは,「魂を抜く」こと。これは,以前から彼女の口にのぼっていた言葉なのですが,人間関係のバランスをとる際に,大いに役立つアドバイスだと感じます。人と衝突してまで,どうでもいいことまで我を通す必要がないことに気付いたと言えましょうか。人の話しをまずは聞いて,時には魂を抜いて嵐が去るのを待つ。特にダイアローグが断絶しそうな時に重宝します。
もちろんこれは,全てにおいて魂を抜くというわけではなく,自分にとって重要でないことに限りますね。また,重要なことでも,話しが進展しない場合は,ひとまず「魂を抜いて」流れに身を任せてみる。そして,大切なことは,とことん話す。ぶつかりあいながら生まれるものもあれば,自分の考えを覆すことから生まれる発見や,成長するチャンスでもあるわけですから。魂を抜くか,ぶつかり合うか,状況に応じて臨機応変に対応する。どちらからも,学ぶことがありますね。
そうそう,TAKAMIさんと話していて盛り上がった「第1回高松国際ピアノコンクール」の感想を簡単にまとめておきます。第一次審査から本選まで,全ての演奏を聴きました。
最終的には,モスクワ音楽院の大健闘でした。ラフマニノフとスクリャービンがゴールドメダルを分かち合った伝統にのっとり(?),第1位のパヴェル・ギントフ氏(ウクライナ出身)と2位のスタニスラフ・クリステンコ氏(ロシア出身)が卓越した演奏を聴かせてくれました。
ギントフ氏のリストの「ピアノ協奏曲第2番」,課題曲「屋島」,第三次審査で演奏したモーツァルトの「ピアノ協奏曲第20番」と高く評価されていましたが,第一次審査に登場した時から確かな手応えがありました。バランスのとれた安定した演奏,そして,プリズムのように光り輝く音色の美しさ。オーケストラとの相性の良さも抜群でした。
本選に残った6人のうち,最後から2番目に演奏したギントフ氏。演奏直後の休憩時間には,驚いたことに見知らぬ人々から話しかけられました。興奮状態で演奏の素晴らしさを語る人々。コンクールのために結成された堤俊作氏の率いるオーケストラと共に生み出された音。その響きに共鳴する観衆。日本で,しかもクラシックの生演奏を聴いて,このような熱い反応は初めてです。
第二位のクリステンコ氏は,ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第三番」を演奏しました。40分を超える大熱演。もちろん,映画ファンなら,「シャイン」の主人公がこの曲を弾くために,どれほどの犠牲を払って練習に打ち込んだか思い浮かべるかもしれませんね。そして,クリステンコ氏の「陰陽」(Yin and Yang)の片割れのごとく,ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第二番」を弾いたソフヤ・グルヤクさん(ロシア出身)は,第4位に入賞です。
クリステンコ氏と,グルヤクさんの音楽に対する厳しく真摯な姿勢が伝わってきました。同じように猫背でピアノに毅然と立ち向かう2人は,やはり最初に登場した時から目が離せませんでした。グルヤクさんは,パリに留学中とのことですが,ロシアのピアニストによるラフマニノフを,2曲続けて聴くことができたのには感激しました。
そして,このコンクールのシンデレラボーイ。王超(Chao Wang)氏です。最初,新進気鋭のピアニスト郎朗(Lang Lang)氏を彷彿する華麗なタッチで登場しましたが,段々自分独自の音が現れてきたのには驚きです。本選のショパンの「ピアノ協奏曲第二番」では素直で繊細な演奏を聴かせてくれました。まだあどけなさが残る16歳の少年が,皆の見守る中,まさにコンクール中に成長を遂げたといった感じです。堂々第三位に入賞しました。これからが楽しみです。
日本人の出場者は大変上手い人が多くて本当に素晴らしかったです。その中でも,特に印象に残ったのは,独自の音を持つ田中正也氏,そして,気持ちを込めて演奏してくれた丸山耕路氏。観客を思いやる演奏で幸せな気分にしてくれた近藤亜紀さん。甘美な独自の音色で至福の時を与えてくれた泉ゆりのさん。素敵な演奏をありがとう。是非とも,またいつか演奏を聴かせていただきたいものです。