この1年の映画を振り返って第6夜
2006/08/28 コメントを残す
"Houston, we’ve had a problem here.”
「ヒューストン,問題が生じました。」アポロ13号は,月面着陸が目的でしたが,予期せぬ爆発事故が起き,宇宙管制センター(ヒューストン)へ発したジム・ラヴェル船長の言葉でした。実話に基づいた映画「アポロ13」(1995年)にも登場する有名な言葉です。
風疹に感染した可能性があるため,アポロ13号に当初予定されていた操縦士(ケン・マッティングリー)が,打ち上げ直前に下ろされています。長年の夢を諦めなくてはならならず,失意のどん底のマッティングリーが,アポロ13号の奇跡の生還に大いに寄与しているわけですが,地球に生還できるかどうかも危うい事態に,一瞬にして陥った乗組員と,地上の関係者が力を合わせて,生死を分かつ問題を乗り越えていくところが,興味深いところです。映画は歴史的観点からも,人間の強さと底力を再認識させてくれることからも,よくできていたと思います。
予期せぬ事態は起きるものです。少し近況を。このところ緊急の仕事が入り,余裕がない状態が続いていました。統計の集計,数値の確認と,通常,数週間ないし何ヶ月もかかる膨大な量のデータを大至急処理せねばならず,全ての集中力を使い切りました。一緒に仕事をしていた人が,これほど集中したことは無いと言っていたほどです。フラフラになりましたが,達成感はありました
フラフラになった状態で,今度は,海外から赴任して来る人の住居の準備に取り掛かったわけですが,たちまち取り壊しになるとのことで,新しい住居を探さなくてはなりません。前任者の片付け,掃除と引っ越しで,連日,暑さの中,汗とホコリまみれになり,特に,アレルギー・喘息体質の私にとって,肉体的に厳しいものがあります。いざ引っ越してみると,使えないものが出てきたり,日本語が読めない人には無理でしょうといったことが出てきたり,毎日,新たなチャレンジの続出です。
そして,昨日,一緒に住居の準備をしていた人が緊急入院したと連絡がありました。木曜日に調子が悪くなり,連日の暑さとホコリまみれで疲れが出たのかと思っていました。金曜日に病院に行って点滴を受けていたのですが,なんと,病名は水痘(水疱瘡)だそうです。かわいそう。先日,子どもがなったと聞いていたのですが,まさか,彼女に免疫がなかったとは。
月曜から,上司が一週間出張します。そして,一緒に仕事をしていた彼女は,(伝染病なので)仕事に来ることができなくなります。三人でなんとかこなせるだろうかと思っていた仕事を,一人でどうしましょうか。工事の立会い等,住居の準備を終えて,今週の来日時には,お迎えに行かなくてはなりません。急ぎの翻訳や日々の業務も溜まっています。夏休みの宿題のごとく,日々の業務も,このまま放っておけば,緊急事態になりかねません。考えれば考えるほど,パニックになりそうで,まさに,"Houston, we’ve had a problem here”です。
「アポロ13」では,不幸な事情が重なったものの,どのようにその危機を乗り越えたかが見どころでしたが,パニックもの(危機一髪)は,冒険ものから,スリラー,ミステリーと,映画の題材としてよく採り上げられています。クラシック路線ではヒッチコック監督,そして,近年では,映像的な表現力を駆使したアクションものとの融合で,テーマパークさながらのスリルを味わうことができます。
さて,本題。この1年の映画を振り返ってみましょう。よくできたパニックものでは,「フライトプラン」がありました。あくまでも子どもを守る母親役のジョディ・フォスター主演ということで,「パニック・ルーム」(2002年)との共通点と違い等を見比べてみるのも面白いと思います。
密室で起きた事件,そして,どのようにパニック状態を克服しつつ,生き延びるか。アメリカを舞台にした「パニック・ルーム」と,ドイツ人監督の手がけた「フライトプラン」の視覚的な違いも面白いのですが,この手の映画は,ネタが勝負なので,まずは観ていただきたく思います。
知的で強い母親を演じるジョディ・フォスターに対して,子どもを守るといった点では相通じるものがありますが,違ったタイプの母親をジェニファー・コネリーが演じている「ダーク・ウォーター」がありました。ウォルター・サレス監督の英語版での本格的なデビューで,日本の原作(「仄暗い水の底から」)を採用したというのは,なかなか興味深いところです。
サレス監督の「モーターサイクル・ダイアリーズ」を,昨年MSNのブログ(ロード・ムービー)で採り上げましたが,仕事で大掃除をしながら,チェ・ゲバラの喘息の描写を思い出しました。ゲリラ活動に没頭していくうえで,医学の心得があるにしても,強靭な精神力があったにせよ,喘息の発作を,どのようにマネージすることができたのでしょうか。